FC2ブログ

雪と菫青石

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スポンサー広告 |

再会後日談〜先輩〜

「あんた、阿散井とはどうなってるの?」
偶然顔を合わせた乱菊にそんなことを聞かれ、ルキアは目を瞬かせた。
「どうって………普通です」
我ながら間抜けな回答だと彼女は思ったが、他に言葉を思いつかない。
ここのところ恋次とはすれ違いが多くて会えないが、別に喧嘩をしているわけではないし、関係は良好といって差し支えないだろう。
普通、以外の何を言えば良いのか。
きょとんとするルキアを前に、乱菊は密かにため息をついた。
つきあってるのかと思ってたけれど、そうでもなさそうだし。
やきもきするわね、この二人。そう乱菊は胸の内で独りごちた。
「あんたが阿散井から聞いてないなら、先に教えとくけど…」

「どういうことだ、恋次?」
仕事帰りのルキアが、家にこもっている恋次のもとへ押し掛けてきた。
目に怒りの色を滲ませているような…いや、あれは心配の色か。
もうばれたのか、と恋次は頭を掻いた。
「酒に酔って暴れて謹慎など-----------いや、松本どのから話は聞いた」
室内に通されて、恋次が出した座布団に座るのももどかしげにルキアが口を開いた。
「主に暴れていたのは班目どので、お前はもっぱら止めようとしていたと」
重傷の怪我人が出たわけではないが、店の備品がいくつか壊れた。
融通の聞かない奴が、監察局に通報した。
そしてその騒ぎの中で一番の上位席官は副隊長である恋次であった。
一角はもちろん謹慎処分になったが、連帯責任で-----監督不行き届きの廉で------恋次も一日の謹慎を言い渡された。
「お前のよく話す班目どののお人柄を聞く限り、わけもなく暴れる方ではあるまい」
恋次の目をひたと見据えて、ルキアは切り込んできた。
「何があったのだ」
何が、と言われても話しにくい。どこからどこまで話したものか-----恋次は二日酔いで重い頭を押さえた。

「で、どこまで行ってんだよ?あの嬢ちゃんと」
升酒をくらいながら、一角が恋次に尋ねた。早い時間から飲み始めたので、さすがの彼もかなり酒が回ってきている。
小料理屋の二階、衝立てに仕切られた座敷の片隅で、恋次と一角、弓親は酒を酌み交わしていた。
「どこまでって…家族から始めることになりましたよ」
恋次は寂しげに笑って、杯の酒を飲み干した。
そこからやり直そうと思ったのは自分であるが、ルキアがそれに安心して笑顔を見せてくれるようになったのも嬉しいが------この先の道のりは長そうだ、と恋次は思った。
だが学院のころから数えてもかれこれ四十年以上は待ったのだ。
あてもなくただ焦り続けたあの頃に比べれば、随分とましになった…と恋次は思った。
少なくとも、隣にはいられるのだから。
「お前、それでいいのか------」
と一角が言いかけたとき、衝立ての向こうで笑い声がした。
恋次たち三人よりも後から入ってきた男たちである。
「信じられねえ、俺だったらごめんこうむるな」
「いくら出世したいからって、そこまでするかね?」
男たちもしたたかに酔っているらしく、大声が耳障りであった。
「仕方ねえだろ、せっかく昇りつめた副隊長の座がそれだけ大事なんだろうさ」
一角、弓親、恋次の動きが止まった。
「だからって上司のお下がりもらってへいこらするかぁ?俺はイヤだね」
「恥ってもんを知らねえんだろ。いくらお貴族さまのご令嬢だって、上司の情婦(いろ)だった女をなあ」
「でもいいのかよ。今も続いてんじゃねえのか」
「それはねえだろ。朽木隊長に飽きられたから死刑にも反対してもらえなかったってのが、大方の噂だぜ」
「へえ、じゃあお嬢様は新しい愛人をみつけたってわけか」
ルキアのことだ。
と察した恋次の全身の血が逆流した。
だが恋次が立ち上がるより早く、一角が衝立てを蹴り飛ばしていた。
「うるせえんだよ!酒が不味くなるじゃねえか!てめえら表に出ろ!」

「あのな、一角さんにはふがいない後輩がいるんだ」
座布団にちょこなんと座るルキアに、恋次は言葉を選び選び説明した。
「酒の席で隣に座ったやつらが、その後輩のことを馬鹿にしていて」
ルキアの宝玉を思わせる深い紫の瞳が、じいっと恋次を見据えている。恋次の背に冷や汗が伝った。
「で、代わりに怒ったわけだ」
「その後輩の為にか」
とルキアが言った。その後輩とはお前か------と言わないのはルキアの優しさだろうか、と恋次は思った。
「班目どのは後輩思いなのだな」
「ああ。いい人なんだよ」
あの時、一角が表に引きずり出した男たちの前に、恋次は立った。
代わりに怒ってくれた一角の為にも、逃げてはならないと思った。
『なんか言いたいことがあるなら、俺に直接言えよ』
男たちはみな項垂れて、彼を睨みつける勇気もないようだった。
『けどな。あいつを侮辱することは許さねえ。今度は俺が相手になる。いいな』
「…いい人なんだよ」
座敷の二階で、男たちを叩きのめしている時、一角は興奮のあまりこんなことを口走っていた。
『だれが愛人だコラァ!ふざけんな!』
組み付いてくる男を一撃で吹っ飛ばし、別の男に蹴りを入れて一角は叫んだ。
『こいつはなあ!土下座までしたのにちゅーもさせてもらえなかったんだぞおおおお!』
『酔い過ぎだよ、一角。美しくない』
そう言って弓親が止めてくれなかったら、一体彼はどこまで話していたのだろうか。
っていうかアンタ。
見てたんすか、あの時のこと。
「…いい人、なんだけどなあ…」
がっくりと畳に手をついて項垂れる恋次を見て、ルキアは驚いて腰を浮かせた。
「どうしたのだ、恋次?まさか…泣いているのか?」





-----------------------
藍染動乱直後くらいのお話です。
「白い花」「春恋し」あたりでは恋次とルキアは恋人同士ですが
そこに至るまではかなり長い道のりが…というのが当サイトの設定です。
スポンサーサイト

テーマ:二次創作小説 - ジャンル:アニメ・コミック

恋ルキ小説 | コメント:0 | トラックバック:0 |
<<歩み寄り | ホーム | 再会>>

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

| ホーム |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。