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雪と菫青石

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書庫

白哉が雨乾堂を訪れたのは、日もかなり西に傾いた夏の夕暮れのことであった。
夕風の中にまだ昼の熱気が残っている。
白哉の後ろに付き従う恋次は、汗を拭った。

「見舞いなんかいいのに」
数日前から夏風邪で寝込んでいたという浮竹は、今朝から回復してきたとのことで、ルキアに書類を運ばせてここ雨乾堂で簡単な執務を執り行っていた。
「別件もある」
白哉は恋次に持参させた風呂敷包みを開いた。中には十三番隊の蔵書印が押された古書が数冊入っていた。
「参考になった。ついては、別のものをお借りしたい」
「ああ、あれか--------」
「場所を教えてもらえれば、恋次に探させるが」
「いや、あの辺のは分類が特殊でな。朽木に手伝ってもらった方がいい」
文机に置いてあった紙に何冊かの本の名を書き綴ると、浮竹はそれをルキアに渡した。
「すまないが、阿散井とこれを探してきてくれないか」
彼の命を受け、ルキアは恋次を伴って十三番隊の旧書庫へと向かった。

追い払われたんだろうな、と恋次は思った。
本を借りにきたというのはおそらく口実であろう。白哉はなにか、政治的な用向きを浮竹に話にきたに違いない。
そしてそれは、恋次たちには聞かせたくない内容なのであろう。
まあ貴族の方々は苦労が多いな------と恋次は頭を掻いた。
「ここだ」
ルキアは書庫の扉の鍵を開け、恋次を招き入れた。
旧書庫はあまり使われてないらしく、埃の匂いがする。天井に届くほど背の高い書架に、年代を感じさせる本がぎっしりと詰まっていた。
「で、どれだって?探さなきゃいけねえの」
「…年代がばらばらだな」
ルキアは軽く眉を顰めた。
「これとこれは同じ棚に分類されているはずだが、こっちは……かなり奥だな」
「お前、見ただけでわかるのか?全部読んでんのかよ」
「まさか」
ルキアは軽く否定した。
「重要なのはだいたい押さえたが、あとは概略程度だな」
それだけでもすげえ、と恋次は感嘆した。

「そこではない、そっちの棚だ。そう、右から三番目の…右と言っておるだろうが!」
薄暗い書庫に、ルキアの叱声が響いた。
お目当ての本のうちの一つは、書架の一番上の段に納められていた。
もちろんルキアには届かないので、代わりに恋次が手を伸ばしている。上手くいかないのは、達筆すぎて背表紙の題名が彼には読めないからなのだ。
先ほどから違う本を取ってしまっては、彼はルキアに叱られていた。
「もう良い!」
ついにルキアの忍耐心の限界がきた。
「私が取る」
え、どこに脚立が?と恋次は周囲を見回した。そんな便利なもんがあるなら、俺じゃなくて最初からそっちを使え…と。
「持ち上げろ」
振り向いた恋次の前で、ルキアは両手を高く上げた。
「私を持ち上げろ、と言っておるのだ」
自分が何を要求されているかを理解した恋次の動きが止まった。

「涼しいな」
話が終わった白哉が、麦湯を飲みながら言った。
「朽木が部屋の空気を冷やしてくれたからな」
寛いだ様子で浮竹が答えた。
「氷雪系ってのは便利でいいな。特に夏とか」
白哉の片眉が上がった。『ルキアに何をさせているのか』という意味が込められている。
「遅い」
「ゆっくり探してきてもらおうと思って、古いのを頼んでしまったからなあ」
浮竹は心配そうに言った。
「難儀してるのかもしれん。悪い事をした」
湯のみを置くと、白哉が無言で立ち上がった。
「おい、白哉?」
驚く浮竹を一顧だにせず、白哉は書庫へと足を向けた。

「そう、もうちょっと右に寄れ…よし!」
目当ての本を引き抜いて、ルキアは嬉しそうに笑った。
「これで終わりか?」
「あと一冊だな」
げんなりする恋次を、ルキアは笑って励ました。
「最後のこれは入り口近くの棚にあるはずだ。それを探せば帰れるぞ」

白哉が書庫の扉を開いた時、まず耳に入ってきたのはルキアの声であった。
日頃屋敷で聞くのとは違う、明るく闊達な響きであった。
「だから!そっちではない!」
「そっちじゃわかんねえよ!右とか左とか言え!」
言い返しているのは恋次の声。
何をしている、と立ち並ぶ書架の間に入った白哉の目に入ったのは。

「あ…兄様」
恋次に脇の下に手を差し入れられて高々と掲げられたルキアが、義兄を認めて目を見開いている。
驚いた子猫のようであった。
「大丈夫か、お前たち。見つかったか?」
白哉の隣に立つ浮竹は、そう尋ねた後で一つ身震いをした。
「ここ…寒くないか?いや、この寒いのは---------白哉?」
白哉の強ばった横顔を見つめて、浮竹は怪訝そうに尋ねた。
「ええと…お前も氷雪系だったっけ?」
のんきな事を言うルキアの上司と、不穏な気配を漂わせる己の上司を交互に見て、恋次は掲げていたルキアをそっと下ろした。
(浮竹隊長、それは冷気じゃなくて--------)
恋次は暗澹とした。自分の上司は、はたして彼の言い分を聞いてくれるのだろうかと。
(---------殺気です)
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テーマ:二次創作小説 - ジャンル:アニメ・コミック

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