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雪と菫青石

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二人

この前までは蝉の声が鳴きしきっていたのに、ふと気づくと朝夕の風が冷たい。
十一番隊の裏庭の柿の木の下で空を見上げると、鮮やかに実が色付いている。
秋である。
午後から流魂街への見回り任務に出かける前に、一角は隊舍を出て街へ向かった。
特にあてはない。ただの気まぐれである。
新人を連れて流魂街を巡回するだけの仕事は、どうも気乗りがしない。弓親に任せるか……と彼は思った。
そぞろ歩いているうちに西十四区に出た。この辺りは、趣のある店構えの商家や、洒落た茶屋が並んでいる。彼の視線が見るともなしに帚目がきれいに通った一つの茶屋に向かい、そこで止まった。
野点傘がさしかけられた下に緋毛氈の縁台が置かれていて、若い男女が寄り添うように腰掛けていた。
女の方が何かを話しかけ、男はそれに耳を傾けている。
時折女の方が身振り手振りを交えて、何かを力説しているような仕草が、どこか子供っぽく感じられる。
男はそんな様子が愛おしくてならないといった風情で、笑みを浮かべて聞き入っている。
仲良さげに、二人して団子など齧りながら。

-------------お前が命を掛けて助けに行ったのは、そんな女だったのか。

一角は、恋次と話すルキアを見つめた。
四番隊の療養所に入所していた恋次を見舞いに行った折に、彼女を見かけたことがある。
もっと線が細く、儚いまでに頼りなげな印象であった。殺気石の牢から解放されて間もなくの頃で、あの様子では極限まで体力が削られていたのだろうと、弓親が言っていた。
更に前には、朽木白哉に付き従って歩く彼女を見た事もある。
綺麗な顔をしているとは思ったが、それだけであった。
生気のない、人形のような女という印象だけが残っていた。

今恋次の隣にいる彼女は、春を待ちかねていた花が一斉に咲いた時のような、弾けるような喜びを全身で表している。
そんな女だったのか、と一角はルキアのそんな姿に驚きを覚えた。
そして恋次は、一角がこれまで見た事もなかった優し気な笑顔を彼女に向けている。
二人の並ぶ姿は、まるで一対の雛人形のようであった。傍らに、互いが居ることが当たり前で、片方が欠けることなどけして考えられないような。
まあ雛人形にしちゃあ男の方の柄が悪すぎるな、と一角は笑った。
あの燃えるような赤毛に、あの入れ墨。あの体格。
女子供が喜びそうな小洒落た茶屋にはまるで不似合いな風貌。
十一番隊のかつての同僚たちにこの光景を見られでもしたら、恋次はさぞかし茶化されることであろうと彼は思った。
『お前のそのにやけ顔を鏡で見てみろ』とからかってやりたい気持ちもあったが、後輩がやっと手に入れた幸福な時間に水をさすのも忍びない。
一角はそう思って、そこから立ち去ろうとした。
「あ……」
恋次が顔を上げた。一角と目が合う。
ルキアは立ち上がって、一角に一礼した。恋次の先輩に敬意を表したのであろう。品のある仕草であった。
「一角さん……」
恋次の顔がだんだん赤くなり、耳まで朱に染まった。
-------------お前、照れてんじゃねえよ。こっちまで恥ずかしくなる。
なぜかはわからないが、一角の頬も少し熱くなった。
じゃあな、と手を挙げて挨拶し、一角はその場を立ち去った。
無性に暴れたいような、むずがゆい気分になる。
新人どもに稽古をつけてやるか、久々に弓親と打ち合いでもするか。そう思って、彼は足早に十一番隊の隊舍への帰途を急いだ。


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一角視点で、いっちゃいちゃする恋ルキ。
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テーマ:二次創作小説 - ジャンル:アニメ・コミック

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