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雪と菫青石

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夜明け

またあの夢を見た。
伸ばした手は宙を虚しく掻き、ルキアは己の叫び声で跳ね起きた。
冬の暁闇の静寂である。鳥の声もない。
まだあの夢を見る、とルキアは半身を起こした。
早鐘を打つようだった鼓動がだんだんと静まっていく。
だが乱れた思いはどこへ帰り着くともなく、まだ今日があの日であるかのような錯覚さえ呼び起こし、耐えきれずルキアは己の両耳をその手で塞いだ。
-------------------彼の人の最期の呼吸が、耳に残っている。
名を呼びたいと思ったが、声も出ない。悲鳴すら封じられ、ルキアは立てた膝に顔を伏せ、小さく丸まった。
その姿勢で身じろぎもせず、彼女は身の内に吹き荒れる嵐をやりすごそうとした。
しんとした明け方の冷気が、ルキアの身体からも寝床からも熱を奪って行く。
空が見たい……と不意にそんな衝動が彼女の中に起こり、ルキアは顔を上げた。
使用人に気づかれぬよう、息を殺してルキアは暗い廊下を渡り、裸足で中庭へ出た。
薄い寝間着ごしの身体にも、凍てついた地を踏む素足にも、痛いほどの寒さが襲ってくる。
かじかむ手を、ルキアは凍える我が身に廻した。

いつも恋次がそうしてくれるように。

なぜだろう、私はあの温かさに慣れてはいけないのだという声がするのだ……とルキアは震える身体を押さえながら天を見上げた。
まだ許されない、まだ許されない、まだ許されないと。
誰が何を赦すと言うのか。
誰が何を裁くというのか。
群青の空にはまだ星が残っていたが、東の地平は朱と橙に明るみ始めてきた。
この朝焼けが見たかった。
夜を灼き尽くしていく鬱金と東雲色。
ルキアは瞬きもせず、金色に燃える雲の帯に見入った。

『朽木、お前は今キツいかもしれないが』
夜勤明けのある朝、瀞霊廷が一望できる丘の上で海燕は言っていたのだ。
『それでも、これで良かったんだと思える朝がいつか来るんだ。
 これまでの全てが、長い道のりが、過ちが、災厄が、今の自分を作る為に必要なものだったんだと……。
 ある日突然、朝日を見た時に何もかもが終わったと思うみたいにわかるんだ。
 今のお前には難しいかもしれねえけどな』

海燕殿、私にはまだわからないのです……と、ルキアは嗚咽を飲み込んだ。
だがそれでも朝は来る。
庭に立ち尽くすルキアを見つけて騒ぐ侍女の声がした。
ルキアはいつもの平静な顔を作り、侍女の持ってきた羽織に袖を通し、素直に邸内へと戻った。
部屋に戻る前に、もう一度明けて行く空の水色を目に焼き付けた。
朝が来る。
私はわからないままでも歩いて行かなければならないのだと。
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テーマ:二次創作小説 - ジャンル:アニメ・コミック

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