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雪と菫青石

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冬日

日差しは眩しいほどに明るいが、空気は冬の匂いである。ぴんと張りつめて、寒い。
二月の風は、衣に染み通るほどの冷たさである。
「こんなに晴れているのに、明日は雪だってよ」
昼休みに待ち合わせて一緒に昼食をとった恋次とルキアは、食後の散歩がてら梅の花の咲く小路を遠回りしていくことにした。
梅の花を見上げて、風に運ばれてくる香りを楽しんでいたルキアが
「沈丁花が咲くのはまだ先なのだろうな」
と言った。
花の名前に詳しくない恋次だが、沈丁花は知っている。ルキアが教えてくれたのだ。
それまでは花になど気を配る余裕のない月日を送っていた彼である。
五番隊から十一番隊に引き抜かれ、ただ上を目指して牙を磨いていた日々。
六番隊の副隊長に抜擢されたかと思えばあのルキアの一件と、あの藍染の擾乱----------
「最近少し暖かくなってきたと思ってたんだが、また雪かよ。今年は雪が多いな」
ぼやく恋次に、
「仕方あるまい。それが冬だ」
とルキアは笑った。
「暖かくなったり寒くなったりの繰り返しで春が来るのだそうだよ」
「そうか」
「と、浮竹隊長が仰ってた」
「なんだ、受け売りか」
呆れる恋次に髪の毛をくしゃりとかき回されたルキアが、その手を掴んだ。
「やめぬか!まったくもう」
冷たい指が、恋次の指に一瞬絡み、離れて行く。
恋次の胸が、一瞬波立った。
あの指を掴んで、自分から絡め、引き寄せることが許されるのならば。
だがそれを恋次はどうしてもすることができないでいた。

だって踏み込めば。
お前はまた心を閉ざしてしまうから。

「この前の話だがな」
彼の内心の動揺など知らず、ルキアが話題を変えた。
「受けようと思う」
「そうか」
藍染の乱の直後、ルキアに中級席官昇進への話が来ていた。
これはルキアが知らない事であるが、あの義兄が手を回していなかったならば、本来もっと早くに通過していてしかるべき座である。
「お前に比べれば階(きざはし)をほんの一歩上がった程度に過ぎぬがな。私にそれだけの責を任せてくださると仰る隊長の信頼に応えねばと思うのだよ」
そう語るルキアの横顔は、冬の日差しを受けて柔らかく輝いていた。
「…てめえならすぐ追いつくだろ」
あの無表情な上司の気持ちが今ならわかる、と恋次は思った。
部下を持ち、一小隊を任されるということは、その分任務の危険度もいや増すということである。
だが前に進もうとする彼女の決意を枉げることはできない。
あの男を喪ってから立ち止まっていた彼女が、歩き出そうとしているのだ。

 寒さと暖かさの間を行き戻りしつつ春が来るように。
 願わくば彼女の心にも、安らぐ日が来ますように。

恋次は冬の日差しにそう祈りを込めて空を見上げた。
冬木立に切り取られた空は、どこまでも青かった。


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破面編後、ルキアは一足飛びに副隊長になったのではなく、ちょっと段階を踏んでから昇進してった-----という設定で。
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テーマ:二次創作小説 - ジャンル:アニメ・コミック

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