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雪と菫青石

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春恋し

冬にしては空気が柔らかく、日差しが暖かな日であった。
卯月の頃の陽気だと誰かが言っていたのを、花太郎は今日どこかで聞いていた。
梅の花の咲く小道を、彼は走った。表通りを行くよりこちらの方が近道なのだ。
早番の彼と待ち合わせて、ルキアがお茶につきあってくれる。
遅刻したくない。いや、早めについておきたいくらいだ。
そう思う彼の足は、自然と小走りになった。
待ち合わせの建物前に、待ち合わせの刻限より少し早く着いた。
日が延びたので、この時刻はまだ明るい。それがなんだか彼には嬉しかった。
春が近いのだな、という気がするのだ。


しばらく待っていると、死覇装のルキアが道の向こうに見えた。彼女の方も花太郎に気づいたらしく、軽く手を挙げた。
「すまぬ、待たせたか?」
「いえ、今来たところです」
小柄な花太郎よりも、なお彼女は小さい。
だが人目を引くような整った顔立ちと姿勢の良いその姿は、凛とした雰囲気を漂わせている。
思わず花太郎はその横顔に見とれてしまった。
「何だ?」
ルキアは片眉を上げて彼に問うた。こんな仕草は白哉にそっくりで、花太郎は首を竦めた。
あの冷徹に見えて妹をこよなく偏愛している隊長が、彼は少し苦手なのだ。
「なんでもないです。あ、どこに行きましょうか?」
「どこと言っても、私はあてがないのだが…花太郎がお勧めの店はあるか?」
「…そうですね、永福楼が新作の苺を使った甘味を出していると聞きました」
「ではそこにしようか」
にこりと笑って、ルキアは花太郎を促した。

店はあまり混んでおらず、二人は待たずに席へ通された。
運ばれて来た苺白玉あんみつをつつきながら、二人は思い思いの話をした。
梅の花が綺麗な散歩道のことや、四番隊で飼い始めた小鳥のことや、新作のチャッピーグッズのことや…。
-------------一護のことなどを。
「一護さんが元気にやってるようで良かったです」
最近現世に行く機会のあったルキアは、彼の様子を花太郎に教えた。
「また学校に行く、と言っておったな。なんでも学びたいことができたのだと」
良い事だ、とルキアは目を細めた。
一護を死神代行の道に引き戻してしまったことを、ルキアは心のどこかで悔やんでいた。
代行以外にやりたいことができた------と一護が彼女に告げた時、ルキアは彼の道に幸い多くあれと一心に祈ったのである。
「今日は花太郎に会えてよかった」
しみじみとルキアにそう言われて、花太郎の心臓が跳ね上がった。
「…えっ、あ、あの…」
「恋次にこんな話はできぬしな」
ルキアは小さく嘆息した。
そうですよねえ…と花太郎も頷いた。一気に上がった心拍数が、落ちて行く。
恋次はああ見えてものすごく---------嫉妬深いのだ。
ルキアと共にいる時になど、恋次は花太郎にも気さくに話しかけてはくれるが…その目は笑っていない。
ルキアは気づいていないようだが、恋次から発せられる殺気にも似た“邪魔者を排除したがる霊圧”に、花太郎はいつも気圧されてしまう。
「一護の話をすると、あ奴はいつも不機嫌になるのだ。わけがわからぬ」
机に頬杖をついて、ルキアはむう、とむくれた。その表情が子供のように可愛らしくて、花太郎は笑みをこぼさずにはいられなかった。
「何がおかしいのだ」
「いいえ。あ、ルキアさんお茶のおかわり頼みましょうか?」
店員を呼び止めて茶を頼み、花太郎は話題を変えた。
「恋次さんと言えば、この前大手柄だったそうですね」
「そう、そうなのだ!たまたま大虚に行き会ったそうなのだが------」
身振り手振りを添えて、恋次の手柄をルキアは我がことのように嬉しそうに語った。
その具体的な話のほとんどは、恋次が彼女に語ってみせたことなのだろう。
「すごいですね、恋次さんって」
「うむ。滅多に他人を誉めない兄様も、恋次を労っておられた」
そして話題が白哉のことになると、とたんにルキアがはにかむような表情を浮かべてもじもじしだした。
義兄とのことを話すのは、彼女にとってはとても照れることなのらしい。
店が混んで来たのを機に、二人は席を立った。
帰る道すがらも、いろんな話をした。
「今日は花太郎に会えて、本当に楽しかった」
とルキアは頬を染めて言った。
「こんなに話したのは、久しぶりだ」
この前一護とはゆっくり話もできなかったからな、とルキアは言う。
ふと思いついて、花太郎はそのことを問うてみた。
「ひょっとしたら一護さんって、恋次さんの話すると不機嫌になりません?」
「よくわかるな!」
ルキアは驚いて目を見張った。
「一緒に修行をした仲であるのに、なんなのだろうな。あ奴ら、仲がいいのか悪いのかわからぬ」
それで朽木隊長は、恋次さんと一護さんの話題が出ると不機嫌になるんですよね。
と、そこまで踏み込む勇気は花太郎にはなかったが、ルキアの方からその話題に触れて来た。
「兄様も、恋次や一護の話をするとなぜか…」
やはりそうか、と花太郎は苦笑した。
ルキアさんの周りは、大人げないひとでいっぱいだ、と。
そうさせているのはひとえに、ルキアの所為であるのだが。
ルキアの口から他の男の話を聞くことは、寂しいようなきりきりと胸を刺すような思いを花太郎にもたらすのだが、それでもなお彼女と話すのは楽しかった。
こうやって共に肩を寄せ合って歩いても、手もつなげない関係なのだけれど。
でもこの距離感がちょうどいい、と彼は思った。
身長差があまりない二人は、並んで歩くとお互いの顔がよく見えるのだ。
夕風に乗って、梅の香りがほんのりと漂ってきていた。
春はもうそこまで来ている。

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(後書き)
勢いで花ルキを書いてしまいました。花ルキっていうか花→ルキ。
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テーマ:二次創作小説 - ジャンル:アニメ・コミック

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