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雪と菫青石

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夢と知りせば

眠るのが怖い。
あの頃の夢を見るから。
何もなくて、お互いが全てだったあの頃の。

今日も目が覚めたら見知らぬ天井が目に入った。
ゆるゆると思考が戻ってくる。ああここは朽木家、だ…とルキアは思った。
気怠い身体を無理に起こし、身支度をする。侍女にあれこれ世話を焼かれるのは好きでないのだ。
他人に身体のあちこちを触られることに、ルキアは未だに慣れることができない。
だがルキアの目覚めた気配を察して、侍女が部屋に入って来た。
こうやって気詰まりな一日が始まるのだ。
十三番隊の隊舍に向かっていたルキアは、朝にはふさわしからぬ雑然とした気配に足を止めた。
夜勤明けなのであろう、血と埃にまみれた男たちが十一番隊の隊舍の方向へ帰って行くところであった。
その中に懐かしいあの赤い髪を見つけて、ルキアの血がさあっと引いた。

会いたくない。
会えないのだ、まだ。
こんな無様な私のままでは。

ルキアはとっさに物陰に隠れて、男たちをやり過ごした。
また昇進したのだと聞いたよ、とルキアは恋次の後ろ姿に呼びかけた。
赤毛の男は、あの頃より一回り逞しくなったように見えた。
祝いの言葉の一つも贈ることのできぬ自分が、心底惨めであった。

重い足を引きずって、なんとか十三番隊の隊舍へとルキアは辿り着いた。
「よう、ひでえ顔してんな。低血圧か?」
ルキアの頭をぽんと叩いて、海燕が笑った。
「おはようございます、海燕どの」
掠れる声を絞り出すルキアの髪を、海燕は心配そうにかき回した。
「目の下、すっげえクマだぞ。寝不足か?」

そうなんです眠れないんです海燕どの。
眠るとあ奴の夢を見てしまうから、毎晩布団に横になっても、目を閉じるのが怖いのです。
でも本当に怖いのはまだこんなに執着している自分の浅ましさで。
夢の中ではあんなにも幸せだから、目覚めたくない目覚めたくないと思いながら毎朝目を覚ます自分の弱さがほとほと嫌になるのです。

とは言えなくて、
「大丈夫です」
とルキアは笑顔を作った。
自分でもひどく歪んだ笑顔になったのがわかった。


思ひつつ 寝ればや人の 見えつらむ 夢と知りせば 覚めざらましを


----------------------
(後書き)
最後の一首は古今集、小野小町。
読後感最悪な短編ですみません。
「雲の彼方に」とセットでお読みください。
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テーマ:二次創作小説 - ジャンル:アニメ・コミック

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